銀海余滴
てがみ—ボストンより
河本 正一
pp.74
発行日 1955年1月15日
Published Date 1955/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202074
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ボストンに来ています。アメリカの大きな病院でocu-pational therapyといつて,入院中の患者について,その慰安や職業補導が大規模に行われています。眼では網膜炎の患者のように入院が長いので殊に必要です。小説,科学,哲学などあらゆる部門に亘る蓄音器のレコードがあり,その面には点字で題目が書かれています。昔東大の病室で夜患者に蓄音器を聞かせていたのを思い出しました。こちらではこれをtalking booksとよんでいます。その他粘土細工,革紐の上草履つくり,プラスチツクの紐による編物などいろいろあります。マサチユーセツツの眼耳鼻病院では小児の部屋があり25人位入院していますが,之に対して專門の教師がついて教育しています。(バルチモアの結核の病院でも特別の教室があり,授業をやつているのを見ました。)又ここでは点字の教育をし多くの点字の本を備えています。耳鼻科の患者も一しよなので更に広範囲の工作の道具や材料が備えてあります。此病院には井上さんのよく御存じのDr.TrotterがいてTonographyをやつています。ヘレンケラーが入学していたPerkin Institute for the Blindという盲学校に行つて見ました。こゝには立派な図書館があつて,2500の点字の本,2500のtalking booksを具えています。これを前記の病院などへ供給しています。
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