特集 眼科臨床の進歩Ⅲ
網膜剥離
網膜剥離Diathermie法
桑原 安治
1
1慶大
pp.581-588
発行日 1955年4月15日
Published Date 1955/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202191
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綱膜剥離は眼内腫瘍其の他の内眼疾患の為めに続発する続発性網膜剥離と何等先駆する疾患なしに突然惹起する特発性網膜剥離とがある。茲に網膜剥離手術の対象となるのは主として特発性網膜剥離である。此の特発性網膜剥離は従来難治の眼疾患の中に算えられ,其の療法としては僅に網膜下瀦溜液の漏出絶対安静等の姑息的療法が試みられ,従つて其の予後は悪く治癒率は15%内外に過ぎない為に網膜剥離と診断を下されるならば其れは不治を意味する程であつた。処が1919年にGonin氏が網膜剥離療法の劃期的手術法を発表し其の治癒率は50%を越え,従来の姑息的療法15%の内外に較べると格段の差が認められる。今日より見ればGraefe-aemisch眼科全書に於けるLenz氏の網膜剥離手術編の如きは,既に歴史的価値を有するに過ぎない。網膜剥離の眼底を詳細に観察すると三種の重要な変化が認められる即ち網膜が剥離して硝子体方向に突出して居る事,其の剥離部は特有な青色を呈して居る事,それと同時に青色と極めて対照的な真赤な網膜裂孔が認められる事である。このGonin氏手術に於いて最も重要な問題は網膜裂孔にある。此の網膜裂孔は既に古くde Weber, Leber氏等によつて指摘せられておつたものであるが,網膜剥離の発生と直接な因果関係に就ては深く注意せられておらなかつた。
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