銀海餘滴
眼科醫の知識—抗生物質使用法の現實
中泉
pp.427
発行日 1952年5月15日
Published Date 1952/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201174
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ペニシリン等抗生物質は,次第にきかなくなる。質が低下するのではないか。粗製濫造されるのではないか?という事を屡々耳にする。これは醫者ばかりではない素人の間でもそういう事が云われている。所がさに非ずで病原微生物が耐性を増加した爲であるので決して薬品の質が下落したのではないそうである。例をペニシリンにとるとたしかに今はきかないが葡萄状球菌を例とすると以前の200倍も菌の耐性か増加しているそうである。(第307回東京眼科集談會桐澤博士特別講演)即ち以前の200倍のペニシリンを用いねばならぬという事になる。以前は眼科醫もペニシリンの點眼軟膏を瓦當り2000單位のものなどが使用された。但し今は大抵の眼科醫が瓦當り1萬單位以上のものを點眼している現實である。即ち5倍以上多量に使つてもなおかつよくきかぬといつてもなげいているのである。所が細歯の方はとうに200倍も強くなつているのである。これから計算すると瓦當り40萬單位を使用せねばならないのでプロカインペニシリンを大體注射液をそのまま使う樣なわけになる。又注射に於ても同樣である。以前は24時間に20萬−30萬單位の注射で充分であつたものが,現左は30萬ではきかなくなり60萬か90萬が必要となつて來た。30萬注射して効かなければペニシリンを他の抗生物質にかえた方がよい等と云われたのは夢で現在でに30萬注射できかねば60萬,90萬と注射すべきである。
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