特集 オキュラーサーフェス診療アップデート
2.オキュラーサーフェス疾患に対する新しい治療法
内皮障害
Topics 内皮機能不全に対する新しい治療(Rhoキナーゼ阻害薬)
奥村 直毅
1,2
1同志社大学生命医科学部医工学科
2京都府立医科大学視覚機能再生外科学
pp.153-155
発行日 2012年10月30日
Published Date 2012/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410104447
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角膜内皮細胞とその特徴
角膜内皮細胞はポンプ機能とバリア機能を有する細胞である。六角形の形態であり,細胞密度は2,500~3,000個/mm2程度である。角膜実質の「水を吸う性質」である吸水圧に対して,ポンプ機能による前房内への水分の汲み出しと,バリア機能による角膜実質に流入する水分の制限により角膜の透明性を維持している。
臨床上最も問題となる角膜内皮細胞の特徴は,増殖能が非常に乏しいことである。角膜内皮が障害されると,創傷周辺部の角膜内皮は非常に限られた細胞増殖を伴い,伸展と遊走によって創傷部位を修復する。特に生体内での増殖が著しく制限されているヒトなどの霊長類においては,主に細胞の伸展と遊走により創傷部位の修復が行われる。そのため,創傷治癒の後には六角形以外のいろいろな形の細胞の出現や細胞の大小不同を生じ,細胞密度が減少する。重篤な角膜内皮障害により,細胞密度が500個/mm2以下に低下すると,代償しきれず,角膜は不可逆的に混濁し,水疱性角膜症と呼ばれる病態に至る。
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