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はじめに
急速な高齢化社会に伴って年間約100万件を超すともいわれる白内障手術は,屈折矯正手術としての役割も担うようになってきた。とくに中高年者には眼鏡などを使用せずに遠近が見える方法が望まれるようになり,白内障手術は多焦点眼内レンズ1),調節性眼内レンズ2),モノビジョン法3~7)などさまざまな老視矯正法をオプションとして持っている。
モノビジョン法とは一般的に優位眼を遠見用,非優位眼を近見用に矯正して遠方から近方まで良好な両眼開放視力を獲得することを目的とした老視矯正法で,筆者らは1999年から白内障手術に応用している(conventional monovision)。本法は両眼を使って外界を見ることが重要で,両眼から入力される視覚情報は中枢で統合処理(選択・抑制)される。
この視覚情報の処理をスムーズかつ上手に行うためには,利き眼(眼優位性)の強さが弱いことが前提となる。しかし,この眼優位性の定量評価の煩雑さがモノビジョン法を一般的に普及させるまでに至らなかった原因の1つでもある。これまで筆者らは眼優位性を定量評価する機器を独自に作製して臨床応用を試み8),眼優位性の強さと眼位角度との関連性などを報告した。眼位は輻湊運動や融像力の有無,立体視獲得の目安にもなりうるものであり,モノビジョン法の成功のためには近見外斜位角度10Δ以内であることが望ましいと考えている9)。
筆者らの施行する眼内レンズによるモノビジョン法はコンタクトレンズの場合とは違い,矯正度数を変更する際の侵襲が大きいので,術前に適応と治療方針を慎重に決める必要がある。ここでは当院で施行しているモノビジョン法について,最近のトピックスを含め白内障手術の観点から述べる。
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