コラム
脳脊髄液圧の影響
中村 誠
1
1神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学
pp.32-33
発行日 2009年10月30日
Published Date 2009/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102913
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緑内障性視神経症は,篩状板とその領域の軸索に病変の首座があると考えられている。篩状板は前方から眼内圧による圧力を受けるだけではなく,後方からは視神経の組織圧,眼窩内圧,そしてくも膜下腔内の脳脊髄液(cerebrospinal fluid)から圧力を受けるため,篩状板を挟んで圧勾配が生じている1)(図1)。したがって,篩状板の後方への彎曲や側方への変形の程度は,眼内圧だけではなく,これらの後方の圧力ないし経篩状板圧較差によって規定されるはずである。
Mayo ClinicのBerdahlら2)は,なんらかの頭蓋内疾患などにより,腰椎穿刺を受けた31,786人中,原発開放隅角緑内障を有する28人と有さない49人の脳脊髄液圧を比較し,驚くべき結果を見出した。前者の平均脳脊髄液圧は12.4±3.9cmH2Oないし9.2±2.9mmHgなのに対し,後者で17.7±5.7cmH2Oないし13.0±4.2mmHgと,原発開放隅角緑内障を有する群で33%低かったのである。また回帰分析や多変量解析を行うと,C/D比(cup/disc ratio)は低い脳脊髄液圧と有意な相関があった(図2)。眼圧が低いにもかかわらず進行する正常眼圧緑内障患者は,脳脊髄液圧がきわめて低いのだろうか。
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