コラム 私のこだわり
医は魂をこめたアートである
大越 貴志子
1
1聖路加国際病院
pp.303
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102507
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「医はアートである」は,日野原重明先生の名言である。網膜硝子体疾患の治療もまさにアートであると思う。
網膜と硝子体という類まれなる,美しい芸術作品は永遠にこのままであってほしいと願う。しかし,不運にも病魔に冒された場合,われわれ網膜硝子体術者はこれらの臓器にやむなくメスを入れる。皮膚に覆われた臓器の外科手術は,どのような名人が手術をしても,あるいは,修練を積みつつある術者が手術を行っても,臓器手術が終了し,ひとたび皮膚縫合が完了してしまえば手術をした臓器を容易には見ることができない。しかし,網膜硝子体の治療ではそうではない。術者の治療の跡は眼底検査でいとも簡単に,つぶさに観察することができる。ほれぼれとするほど美しく蘇った芸術作品もあるかと思うと,戦火の傷跡をまざまざと見せつけられることもある。
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