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今回,増刊号を編集するにあたって,最近の網膜硝子体疾患の診断・治療のめざましい進歩に焦点を当てた。その1つは先進的な科学技術の恩恵によるところが大きい眼科検査法の進歩である。特に,画像診断においては,諸先生のご努力により眼底三次元検査法が思いのほか早く保険収載され(といっても,例えば光干渉断層計の場合,わが国に導入後10年という年月が経過している),さらに一般への普及が見込まれている。一方で,眼底画像検査の精度はさらに向上し,とどまるところをしらない。これにより,網膜硝子体疾患の病態解析の一手法として,層別解析から各細胞レベルの描画へというのも将来の夢ではないところまできている。
第2には,何といっても最近の抗血管新生薬をはじめとした薬物療法への期待である。これには,失明原因の変貌が背景にあり,進歩する手術療法のなか,surgicalでは及ばない部分に発展をしてきた。近年増加している加齢黄斑変性の治療として2004年にわが国で認可された光線力学療法は本疾患の治療に光明をもたらしたが,その欠点を補うべく適応外投与ながらベバシズマブが多数例で使用され,抗血管新生治療の有効性をわれわれは実感した。今秋,わが国で初めての抗血管新生承認薬ペガプタニブが発売され,今後も近々,新しい抗血管新生薬が世に出ることが期待される。40年も前に抗血管新生というアイデアを腫瘍の治療として初めて提唱し,治療として実現に至らせた Judah Folkmanが,昨年秋のAmerican Academy of Ophthalmologyのkeynote speakerとして“Antiangiogenic ocular therapy”と題して講演され,それから間もない本年1月に逝去された。いかに,新しい治療が現実に至るまでに年月がかかるかを示しているが,われわれはいま,これらの恩恵をいかに臨床に生かしていくかを考える時である。本増刊号では加齢黄斑変性や脈絡膜新生血管について,特に別項目で詳述される。
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