やさしい目で きびしい目で・98
読み聞かせ
富田 香
1
1平和眼科
pp.165
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102131
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小児眼科を専門にしているせいか,いろいろな質問をよく受ける。最近困ってしまった質問は「寝る前の本の読み聞かせ」についてである。「煌々と明るい部屋では寝付けないので,薄暗くして本を読むのだが,目が悪くなるのではないか」「子どもが聞くだけではなくて,一緒に絵本の絵を見るとどうなのか。寝た姿勢で見るので,子どもも目が悪くなるのではないか」などなど。
子どもが母親や父親に添い寝をしてもらい,安心した状態で楽しいお話を読んでもらう。こんなすばらしい至福のひとときに,安易に水を差してよいのだろうか。しかし,実際には暗いところで,距離も近くで読む形になることが多く,近視系の人にとってはあまりよくなさそうである。「寝転がって本を読まないこと!」なんて,診察ごとに子どもたちに注意しているわけで,「本の読み聞かせ」ならばいいというわけでもない。ああ,こんなときは人に聞かないで,自分で考えて判断して欲しい,と叫びたくなってしまうのである。どう考えても正解はないので,「本のところの明るさは確保して,長い時間にならないように」など,わけのわからない説明をつぶやくしかない。教養もあり素敵なお母様が,幼稚園に通うお子さんが近視と知って涙ぐみ,「寝る前に本を読んであげたのがいけなかったのでしょうか」と言われると何と返事をしてよいのか,こちらが泣きたくなってしまう。
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