連載 あのころ あのとき 34
医への道のり(1)
佐野 七郎
1,2
1日本眼科医会
2佐野眼科
pp.1600-1602
発行日 2003年10月15日
Published Date 2003/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101399
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細隙灯顕微鏡による水晶体の光学的不連続帯の研究
研究は,指導者(教授)の指導の先へ先へと歩まねばならない。着想と想像力と努力がよい結果を産み,成功へと導いていくと考える。
「君の研究はどこまで進んでいるかね」。大橋孝平教授は,おもむろに口を開いた。昭和34年頃のことである。脳溢血の後遺症で半身麻痺となっておられ,自宅療養されていたので,指導は大橋教授の自宅で行われていた。その後,先生のいわれた水晶体の細隙灯顕微鏡(以下,細隙灯)所見をスケッチし,何枚かお見せして指示を待った。しばらくして「年齢によって,皮質と核の境目あたりの色が変わり,皮質と核の厚さが変わるが,水晶体の細隙灯による光学的不連続帯の年齢的変化を研究してほしい」といわれた。
そのとき,私はすでに大橋教授のいわれることを予想していたから,年齢的変化の観察は半分以上進めていた。「もうすでにその研究に着手しています」という言葉をこらえて,控えめにして「分かりました」といって引き下がった。その後,私の研究は自分なりの考察を加えて,先へ先へと進んでいった。私の研究が大橋教授の思うように着々と進んでいくので大橋教授はご機嫌であった。謙虚な心を忘れずに,取り組む姿勢は大切である。
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