特集 手術のタイミングとポイント
Ⅱ.緑内障
濾過手術,破壊手術かインプラント手術か
近藤 雄司
1
1岐阜大学大学院医学研究科神経統御学眼科学
pp.70-74
発行日 2006年10月30日
Published Date 2006/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100971
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手術法の選択肢
緑内障への降圧治療の基本はいうまでもなく薬物治療である。しかし,許容範囲の最大限の薬物治療を行っても十分な眼圧下降が得られず,視野障害の進行など視機能が障害される恐れがある場合には,レーザー治療や観血的手術など次の治療方法を考える必要が出てくる。
現在,観血的手術の主流はマイトマイシンC(以下,MMC)を併用した線維柱帯切除術(trabeculectomy:以下,TLE)であり,特に進行した緑内障症例や正常眼圧緑内障など目標眼圧が10mmHg付近である場合にはMMC併用TLEが適応となる。MMC併用TLEは術後の低眼圧や晩期濾過胞感染症などの問題点を有しているが,その強力な眼圧下降効果のため広く用いられているのが現状である。MMC併用TLEは結膜に濾過胞を形成することにより眼圧を下げるため,重篤な結膜の瘢痕化が存在し十分な濾過胞が形成されない眼においては良好な成績が期待できない。複数回の手術既往があり結膜の瘢痕化が強い症例やその他,ぶどう膜炎による続発緑内障,血管新生緑内障などはMMC併用TLEの有効性が低いことが知られている。実際,緑内障診療の場では,複数回の緑内障手術既往のある症例や硝子体手術後などで結膜が広範囲にわたり瘢痕化している症例をみることは決して少なくはない。これらの症例においてはMMC併用TLEの効果は期待できず,他の治療法を検討する必要が出てくる。
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