今月の臨床 女性内科的アプローチ—循環器系を中心に
女性と循環器疾患
1.女性の循環器疾患の特徴
橋本 正良
1
1神戸大学医学部総合診療部
pp.36-39
発行日 2002年1月10日
Published Date 2002/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904518
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はじめに
先進諸国ではその平均余命は確実に延長してきている.それに伴って閉経後女性のquality oflifeを考えた健康増進は医療に携わるもののみならず,広く一般大衆の関心事である.罹患率と致死率に関しても男性と女性においては差があり,男女を問わず罹患が認められる疾患にしても,女性に関しては十分な研究がなされていないものも多い.
一般的に男性の血圧値は女性の血圧値より高く,中年層での高血圧罹患率は男性で高い.しかし,高年齢層では逆に女性の高血圧罹患率が上昇してきている.これは高血圧が高齢者,特に女性では閉経以降に高血圧が多く発症することと,女性の寿命が男性より長いことに起因しているものと考えられる.女性は男性に比較して冠動脈疾患発症率が有意に低いことが知られているが,この差は60歳以降減少し,70歳以降では男性とほぼ同程度となる(図1).また同年齢層の比較においても閉経前女性は閉経後女性に比較し冠動脈疾患発症率が有意に低いことが知られている1).これらの疫学的事実は女性ホルモンが動脈硬化性疾患の発症や進展に,抑制的に作用していることを示唆している.
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