今月の臨床 遺伝子医療—現況と将来
悪性腫瘍の遺伝子診断,遺伝子治療
2.卵巣癌・乳癌の遺伝子診断
永田 寛
1
,
田中 憲一
1
1新潟大学医学部産科婦人科学教室
pp.914-916
発行日 2001年8月10日
Published Date 2001/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904404
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はじめに
近年,癌は遺伝子の異常から起こる疾患であることが明らかになっているが,「遺伝性がある」とは限らない.多くの場合は親から受け継がれた正常な遺伝子が後天的に障害をうけることで癌化が始まると考えられている.しかし中には明らかに遺伝性を認めるものがある.p53遺伝子の異常によって起こるLi-Fraumeni症候群や,APC遺伝子の異常による家族性大腸腺腫症など,多くの遺伝性癌でその責任遺伝子が同定されており,これらの遺伝子の胚細胞変異(germline mutation)が受け継がれ,遺伝性癌の発症に結びつくことが明らかになっている.
一方遺伝子診断には,①遺伝性疾患において原因となる遺伝子の胚細胞変異の有無を調べるものと,②体細胞での遺伝子の構造変化または遺伝子の発現変化を調べるものがある.癌を対象とした場合,前者はおもに二次性癌の予測,あるいは家族内の変異保因者での早期発見・発症予防に有用であると考えられている.後者については現在多くの研究が行われており,腫瘍の性格をより正確に把握することにより治療の個別化につながるものと期待されている.本稿では遺伝子の胚細胞変異によって発症する遺伝性腫瘍としての卵巣癌・乳癌に対する遺伝子診断について述べる.
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