今月の臨床 婦人科外来
婦人科医としての必須知識
6.インフォームドコンセントと医事紛争—医療訴訟を防ぐための予防法,対処法
濱田 和孝
1
1聖バルナバ病院
pp.382-387
発行日 1999年4月10日
Published Date 1999/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903591
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●はじめに
医師としての人生を送るうえでの将来への不安について,若い医師たちに聞いてみると,国の医療費抑制策,医師数の増加,ならびに最近の医事紛争の増加が挙げられる.とくに産婦人科領域における医療事故はきわめて頻度が高く,最近の日本医師会の報告では全診療科のなかでもっとも多く,30%をこえ,この傾向は日本医師会医師賠償責任保険発足以来変わっていないとされている1).そこで本稿では医事紛争の実態と,紛争を少しでも減らすための方策について考えてみたい.
われわれの生活の場を考えるとき,絶対安全は存在しない.地震,台風などの自然現象,発達した社会における交通事故や建築現場における事故,少しの油断が,また油断がなくとも,細心の注意が払われていても,偶然が支配する危険が山積みしている.病気は,生物である人間に発生してくる変化であり,医療は,発生した異常を現在の医学知識を用いできるだけ異常発生前の身体的状態への復元を期待して行われる行為である.したがって,自然の一員である人間に共通な一般的な反応と,個体の個性的な反応を勘案して医療を行う必要がある.すなわち,病気は患者それぞれに独自のものであり,まったく同じ患者は存在しないし,治療もまったく同じでよいわけではない.
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