今月の臨床 産科における検査法—有用性と再評価
妊娠中期
9.胎児血流評価はwell-beingの判定に有用か
神崎 徹
1
1大阪大学医学部産婦人科
pp.848-850
発行日 1997年8月10日
Published Date 1997/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903002
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臍帯動脈血流波形の生理学的意義
Trudingerら1)は羊胎仔を用いて,マイクロスフェアーを胎児大動脈から注入し胎盤の胎児側血管をembolizationし,そのときの臍帯動脈S/Dと血管抵抗を計測し,血管抵抗とS/Dに正の相関があったと報告している.Gilesら2)は,妊娠26週から40週までの正常妊娠群,ハイリスク妊娠で臍帯動脈S/D正常群,ハイリスクで臍帯動脈S/D異常群の3群の胎盤の病理的検討から,細動脈の視野あたりの数に前2者間では有意差を認めないが,S/D異常群で有意に減少していることを明らかにし,臍帯動脈血流波形と胎盤の血管変化との一致を証明している.一方,Morrowら3)によると,実験動物胎仔を低酸素状態にしても臍帯動脈血流波形は変化しないと報告している.
臍帯動脈血流波形に変化を与える因子は単一ではないが,胎盤胎児側血管の病的変化による胎盤末梢血管抵抗の上昇が臍帯動脈血流指標を上昇させる原因の一つであることは疑いがない.また胎児低酸素血症単独では臍帯動脈血流波形は変化しないと考えてよい.
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