今月の臨床 妊娠中毒症—どのように変わったか
病態解明の新しいアプローチ
2.発症と遺伝素因
小橋 元
1,2
,
佐川 正
2
,
藤本 征一郎
2
1北海道大学医学部公衆衛生学
2北海道大学医学部産婦人科
pp.250-252
発行日 1997年3月10日
Published Date 1997/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902854
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近年の分子遺伝学の進歩により,妊娠中毒症に関連する遺伝子の研究が進み,従来は家族歴や体質から漠然と捉えられていた遺伝要因の一部が,分子レベルで具体的に把握可能となりつつある.しかしながら本症も多くのcommon diseaseと同様に,複数の遺伝要因と妊娠前,妊娠中の環境要因の共同作用により発症すると考えられるため,今後これらの分子遺伝学の知見を臨床応用するためには,関連遺伝子の探索のみならず遺伝・環境共同作用の解明,さらには倫理・社会学的問題への対応などいくつかのステップが必要と考えられる.
本稿では妊娠中毒症,とくに高血圧を主徴とする妊娠高血圧症(pregnancy-induced hyperten—sion:PIH)の関連遺伝子,遺伝・環境共同作用,およびPIHに対する新しい対策として遺伝子を用いた個別的発症予防の可能性について解説する.
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