今月の臨床 不妊治療—ここが聞きたい
免疫性不妊
4.免疫療法の際,血液の放射線療法の必要性は?
萩原 政夫
1,2
,
辻 公美
1
1東海大学医学部移植免疫学
2東海大学医学部細胞移植医療センター移植免疫
pp.1447
発行日 1996年11月10日
Published Date 1996/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902742
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解答 原則的には血液の放射線療法は必要なし
近年いわゆる輸血後移植片対宿主疾患(graft—versus-host disease:GVHD)が問題となっているが,これは術後患者など免疫抑制状態のある患者に輸血が行われた場合で,しかもHLAのホモ接合体からヘテロ接合体への組み合わせにおいて起こるので頻度は低い.しかしいったん発症した場合には重篤な症状を引き起こす1).妊娠期もある種の免疫抑制状態にあるが,術後患者などにはまったく及ばないレベルである.また,移入されるリンパ球総数は約2〜3×107/回であり,洗浄赤血球1バッグ当たりに含まれる数(1.4±0.9×108)にも及ばず,その点でもGVHD発症の可能性は少ない.
放射線照射の直接の影響として,HLA抗原のみならずその他の細胞間接着因子の発現が有意に低下することが知られている2).また,夫リンパ球が母体内での動態(どれだけの期間,どれだけの細胞数が存在し続けるか)は未解明であるが,移植免疫学の立場からは,一定数のviableリンパ球が,一定期間存在し,ホスト免疫担当細胞への抗原提示を必要レベル行うことが,免疫抑制(寛容)誘導には不可欠であると考えられる.したがって,放射線照射リンパ球は,移入後体内で急速に死滅していくと考えられ,免疫療法の効果が明らかに減少すると考える.
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