連載 OBSTETRIC NEWS
医療訴訟の回避〜肩甲難産
武久 徹
1
1武久産婦人科医院
pp.954-955
発行日 1996年7月10日
Published Date 1996/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902608
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あらゆる分野の訴訟が多発する米国では医療に関するトラブルは絶好の訴訟対象になっている.米国産婦人科医協会(ACOG)会員の80%は1回は告訴された経験を持ち,1回の訴訟が解決するまでに平均5年が費やされる.この間,訴訟の種類によっては医師や家族の生活が崩壊し,日常診療に影響を与えるケースも少なくない.医療訴訟に直面した医師や家族を強力に支える組織があれば,その苦悩はいくぶん緩和されるであろうが(ACOG Committee Opinion,#150, December1994),医療訴訟に巻き込まれた医師は孤独で,ときには医療訴訟が発生していることを外部に極力漏らさないように神経を使う生活を強いられる.
肩甲難産に関する医療訴訟は,とくに新生児に異常が発生した場合は患者や家族の不満と疑問が医師にぶつけられる.その疑問とは,「医師が肩甲難産を回避するために行うべきことを行ったか?」に要約される.具体的には,①被告医師は適切な医学的訓練を積んできたか?,②適切に標準的医療行為を行ったか?,③適切な判断が下されたか?,④児や母体に対する外傷の予知ができなかったのか?,などの1つ1つが検討される.
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