今月の臨床 妊婦の糖尿病マネジメント
疫学・定義
1.妊婦糖尿病は増えているか
堀 大蔵
1
,
濱田 悌二
2
,
蔵本 昭孝
1
1久留米大学医学部産婦人科
2社会保険久留米第一病院
pp.128-131
発行日 1996年2月10日
Published Date 1996/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902406
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現代成人病の1つである糖尿病の歴史は古く,インスリン導入前の糖尿病女性では,妊娠は高い不妊,流産率に加え,たとえ妊娠したとしてもケトアシドーシスによる高い母体死亡,周産期死亡率のため妊娠そのものが例外として考えられていた1).しかし,インスリンの導入は,こういった糖尿病女性にとって,暗黒の時代に妊娠出産の喜びの光を与えるものとなった.妊婦の糖尿病の管理について,明確に概念化されたのは1979年,N.Freinkel2)らによって提唱されてからであり,その歴史は比較的新しいといえる.糖代謝異常の妊婦に対する悪影響の期間も,器官形成胎芽期から巨大児に代表される新生児期まで幅広いことが知られるようになって,血糖コントロールの重要性は内科医,産科医,小児科医に十分認識されるに至り,今日,ようやく糖尿病患者も妊娠できることが一般的となってきた.
近年,欧米化した食生活環境下でわが国でも糖尿病の増加が伝えられているが,妊婦の糖尿病は本当に増えているか,今後増えるかどうか検証してみたい.
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