今月の臨床 難治性合併症を診る—産科
腎・泌尿器系合併症
17.慢性増殖性腎炎
松本 隆史
1
1国立津病院産婦人科
pp.1356-1359
発行日 1994年11月10日
Published Date 1994/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901953
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「慢性増殖性腎炎」は慢性糸球体腎炎の中に位置づけられる.一般に糸球体腎炎とは,形態学的に糸球体に細胞増殖や毛細血管係蹄の壊死などの炎症性病変を生じ,臨床的に血尿,蛋白尿,高血圧,糸球体濾過率(GFR)の低下などを種々の組み合わせで認める疾患群をさす.通常慢性糸球体腎炎は,急性糸球体腎炎の発生から1年以上にわたり蛋白尿,血尿,円柱尿など異常尿所見が持続しているもののうち,膠原病,糖尿病,痛風など二次性腎疾患を除いたものをいう.慢性糸球体腎炎を有する婦人の妊娠,分娩は,健康婦人のそれらと比べると,①妊娠中毒症の発症頻度が高い.②妊娠分娩を契機として母体の腎疾患の進展悪化が加速するケースがある.③子宮内胎児発育遅延(IUGR)や周産期死亡あるいは低体重児出産などの頻度が高いなどの問題点が指摘されている.
本稿では,慢性糸球体腎炎のなかでも比較的頻度の高い増殖性腎炎を中心に妊娠に与える影響や妊娠許可条件,分娩時期の決定などについて述べる.
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