産婦人科クリニカルテクニック ワンポイントレッスン
腟式子宮全摘術の膀胱・腟粘膜剥離法
紀川 純三
1
,
皆川 幸久
1
1鳥取大学
pp.1275
発行日 1994年10月10日
Published Date 1994/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901932
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腟式子宮全摘術は産婦人科医にとって基本的な術式であるにも拘らず,術者の手技に大きな差を生じる手術である.手術視野が狭く,初心者には解剖学的位置関係が掴みにくいことが手技に差を生じる一因と考えられる.したがって,膀胱と腟粘膜の剥離により,子宮を露出させ,解剖学的位置関係を明らかにすることは,本手術における最初にして最大のキーポイントである.本稿では,著者らの行っている腟式子宮全摘術おける膀胱・腟粘膜剥離法について概説する.
子宮を背尾側に牽引し,腟円蓋部全周の腟粘膜に20万倍希釈エピネフリン加生理食塩水(以下,エピネフリン生食)を注入する.膀胱と子宮頸管筋層前面との間にエピネフリン加生食水をいかにうまく注入するかが中重要なポイントである.注入前にミューゾーの単鉤鉗子で子宮を保持し頭側への圧迫と背尾側への牽引により腟粘膜の横皺ができる最下端が膀胱付着端である.膀胱付着部よりやや下部からエピネフリン生食10mlを注入する(図左).その際,膀胱腟中隔と膀胱の間にエピネフリン生食を注入すると,剥離に困難を来すことが多いので,注入中に膀胱部の腟粘膜皺の膨隆の状態を確認するとよい.さらに,両側および後方の腟粘膜下に各々5mlのエピネフリン生食水を注入する.つぎに,子宮を背尾側に牽引し,膀胱付着部のやや下方で腟円蓋部全周にメスで輪状切開を加える.
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