今月の臨床 新しい薬物療法をさぐる
薬物療法プラクティス
8.自己血輸血と増血剤(鉄剤,エリスロポエチン)
井原 勝彦
1
,
西田 幸弘
1
,
雨宮 彰
1
,
大竹 重彰
1
1国立呉病院心臓血管外科
pp.38-39
発行日 1994年1月10日
Published Date 1994/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901570
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人工心肺を用いて行う開心術は,手術前から輸血を前提として発達してきたものであり,輸血なくして心臓外科の発達はなかったと言っても過言ではない.しかしながら,最近では,輸血は肝炎,AIDSなどのウイルス感染や,GVHD(graft ver—sus host disease)の原因として批判を受けるようになってきており,手術に際して,輸血量を節減することはきわめて重要な問題となってきている.このため,われわれの施設でもさまざまの工夫をしてきている.①自己血貯血法(手術前),②希釈法(術直前),③自己血回収法(術中),④ドレーン出血返血法(術後)などを行っている.
このうち手術前の自己血貯血法には,採血した血液をそのまま冷蔵庫に保存するだけというきわめて単純な全血保存法が,最もよく利用されている.しかし,問題は,血液の保存期間は3週間であり,蓄えられる自己血の量におのずから限界があると言うことである.そこで,最近では,限られた期間内にできるだけ多くの貯血を行い,しかも手術前には貧血から立ち直って手術に臨めるように,骨髄の造血機能を刺激しようという目的で鉄剤およびエリスロポエチンの投与が利用されるようになってきている.
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