今月の臨床 胎児環境をチェックする
卵膜
18.絨毛膜下血腫の吸引
吉田 幸洋
1
Koyo Yoshida
1
1順天堂大学医学部産婦人科
pp.1322-1324
発行日 1993年11月10日
Published Date 1993/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901514
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切迫流産とは日本産科婦人科学会の用語解説集によれば「流産への移行状態と考えられ,正常妊娠過程への復帰が可能でもある状態とされているが,必ずしも流産の状態を表現したものでなく,初期妊娠時の子宮出血を主徴とした症状に対する名称である。」とされている。つまり,切迫流産という用語は,厳密には胎児が生存している場合に用いられるべき用語であり,超音波断層法によって胎児生存が確認されている場合の流産率が約3%ときわめて低いことが認識されるようになって以来,これが臨床症状に対する一つの名称に過ぎないことが示されている。しかし,一方では超音波断層法で胎児心拍が確認できている例の中にも,血腫の排出とともに遂には流産となる例が少数ではあるが存在することも経験的に知られている。
近年,超音波診断装置の普及によって,妊娠初期の産科管理に超音波検査がルーチンに行われるようになった結果,切迫流産徴候を示す症例のなかに子宮内血腫の存在が認められる例があることがわかってきた。本稿では,この子宮内血腫形成の病的意義と,これが認められた場合の取扱いについて概説したい。
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