合併増大号 今月の臨床 産婦人科医のための感染症最新レクチャー
扉
早川 智
1
1日本大学医学部病態病理学系微生物学分野
pp.5
発行日 2024年1月10日
Published Date 2024/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409211122
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時を表す古典ギリシア語には,クロノスΧρόνοςとカイロスΚαιρόςの2つがある.過去から未来に途切れることなく流れてゆく時間が「クロノス」であり,これに対して,何らかの事件によって時の流れが変わってしまう主観的時間が「カイロス」である.明治維新や第二次大戦の終戦はわが国にとってのカイロスであるが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も後年カイロスの一つとして記憶されるであろう.2019年末に中国から始まった流行は瞬く間に全世界を巻き込むパンデミックとなり,4年を経た現在2024年でもいまだ終息をみない.
COVID-19のパンデミックはすべての診療科に大きな影響を与えたが,産婦人科も例外ではない.一般的に産婦人科は,腫瘍学,周産期医学,生殖内分泌医学,そして女性医学に大別される.産婦人科感染症は便宜上最後の女性医学に包括されることが多いが,実際にはHPV発がん(腫瘍学),早産,母子感染(周産期),不妊不育(生殖内分泌),そして性感染症(女性医学)などすべての領域に深く関与する.これに加えて,抗菌薬の適正使用や感染症の分子診断,ワクチンの効果と副反応の啓発などは,すべての領域の産婦人科医が知らねばならない必須事項である.
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