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はじめに
子宮腟部は女性の一生涯で生理的な変化を遂げます.女の子として産声を上げてから初経までは扁平上皮でその全面が被われていますが,思春期に入って卵巣が機能しはじめると,エストロゲンの作用により子宮頸管内膜上皮(円柱上皮)が腟腔へ外反していきます.こうして,その広さに個人差はありますが,子宮腟部びらん(仮性びらん)が形成されます.そして,閉経後は年月とともに円柱上皮が頸管内に徐々に退縮していき,子宮腟部は再び扁平上皮に被われるようになります(図1).
閉経後に行う子宮頸部細胞診はSC-junctionより外方の子宮腟部腟粘膜から採取され,真のびらん面を評価していないことがしばしばあります.また,子宮がん検診で“要精査・要再検”の判定を受け婦人科受診となりますが,閉経後はコルポスコピーを行っても不適例(UCF)となり,容易に精査することができないケースが多々あります.その場合,われわれは子宮頸部細胞診異常の源は頸管内にあると想定して頸管内掻把を行い,病変精査につとめています.頸管内掻把は,頸管内に明らかな病変を形成している場合には組織診評価に値する組織量を得ることができますが,子宮頸部上皮内病変など病変が小さい場合は,採取部位が的確でないと往々にして“insufficient material”といった病理組織診コメントを得ることとなります.子宮頸部細胞診を再検しても結果は同様であり,やはりここは組織診による正確な診断が必要となります.しかし,外来診療の範囲で行う諸検査では,正確な診断を得るのはなかなか難しいのが実状です.
そこで,われわれは診断的かつ治療的な手術療法(円錐切除術や子宮全摘術)を行うことを選択肢の1つとして挙げていますが,果たしてその後の経過は…….
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