先進医療—日常診療へのアドバイス 特集
生殖医学の進歩
Current concept
妊娠の成立機序
鈴木 秋悦
1
,
倉沢 滋明
1
,
小松 節子
1
Shuetu Suzuki
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科教室
pp.181-186
発行日 1986年3月10日
Published Date 1986/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207343
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ヒトの生殖,すなわち排卵,受精,着床から妊娠成立に至る過程の多くの問題は,従来,初期の発生に関する研究という困難さから.十分に解明されていなかった。さらに社会的,倫理的な問題との関係から,臨床医学において生殖そのものが扱われることも少なかった。しかし.それらの多くの困難は,過去10年ないし20年の間に次々に乗り越えられ,生殖生物学の著しい進歩にともなって,生殖医学としてめざましい発展をとげてきた。この端緒となったのは,経口避妊薬の開発という,きわめて現実的,臨床的な問題であった。この目的のために排卵に関与する内分泌学的現象,卵巣における卵胞成熟のメカニズムといった,それまで未知だった多くの問題が注目され,解明されてきた。さらに,先天異常発生に関連して,初期発生学の領域でも優れた基礎的研究が積み重ねられてきた。また不妊治療においても,人工受精や卵管手術などの方法が行われ,さらに生殖生物学における知見の臨床的応用とも言うべきIVF-ETが成功するようになって,いまや生殖医学は,臨床医学の中のみでなく,社会的にも大いに脚光を浴びる存在となった。
そこで,この分野における最近のめざましい進歩をふまえて,生殖,妊孕性をめぐる基礎的ならびに臨床的に注目すべきいくつかの問題について考察を加えてみたい。
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