特集 上腹部外科臨床の進歩
肝腎症候群の成立機序
澁沢 喜守雄
1
,
大園 茂臣
1
,
稻生 綱政
1
1東大木本外科教室
pp.649-663
発行日 1952年11月10日
Published Date 1952/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201120
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いとぐち
肝臓と腎臓とが同時に傷害される患疾は,松尾巖先生のいわれる肝腎障碍症1),フランスのL'hépatonéphriteとして,黄熱・Weil病などの傳染性疾患,子癇,四塩化炭素中毒などにこれを見いだすことができる.しかし,外科臨床においてはそれらと別に,肝臓と腎臟とが同時に傷害され,腎不全症状が優位にあって短時間のうちに終末の轉帰をいそぐ状態があるのである.多くは肝胆道疾患の手術あるいは近辺上腹部手術の直後にあらわれ,乏尿・窒素血症・高熱を特徴として48時間内外に不幸の結果を招くことで周知となつている.内科的な肝腎障碍症・L'hèpatonéphriteが日本・フランスで注目研究せられたのに対し,外科的な肝腎症候群は主としてアメリカにおいて開拓され,肝臓死(liver death),肝腎症候群(hepatorenalsyndrome),肝臓ショック(liver shock)などとして研究されてきたのである.
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