明日への展開 ADVANCED TECHNOLOGY
IV.胎児・新生児
骨盤位と帝王切開
雨森 良彦
1
Yoshihiko Amenomori
1
1日赤医療センター第一産科
pp.340-343
発行日 1984年4月10日
Published Date 1984/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206983
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今日の産科学の大きな問題の一つに"骨盤位分娩"があげられよう。この骨盤位分娩の処置については過去10年で劇的な変遷をとげてきた。1970年以前は骨盤位の多くは経腟自然分娩にまかせられていたが,1970年以降,骨盤位に対する選択的社会的適応による帝王切開が増加してきた。この傾向は米国においてはさらに明白で骨盤位のルーチン帝切化が定着してしまった。
何故にかかる劇的な180°の変化が発生したか。それはなんといっても骨盤位の経腟分娩における周産期死亡率が頭位のそれに比して5倍もの高率を示しているからにほかならない。死亡率にとどまらず罹病率についても経腟骨盤位では児に永久的な中枢障碍を後遺することが高い事実が多くの臨床統計によって判明したからにほかならない。さらに社会的にも少産少死型の出産のエコロジーは産婦及び家族が児の完全性を強く希望期待すること,医学的というより法律的に,医療過誤に対する厳しい保証を求める風潮(medical-legal)が医療担当者を防衛産科学へ逃避せしめる傾向を助長したからにほかならない。
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