指標
子宮収縮の生理—分娩に関連して
瓦林 達比古
1
Tatsuhiko Kawarabayashi
1
1佐賀医科大学産科婦人科学教室
pp.449-459
発行日 1983年7月10日
Published Date 1983/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206828
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ヒトの臓器のなかで子宮のように短期間のうちに約15倍の重量になり,約1,000倍の容積にもなる臓器はない。しかも,それを生理現象としてくり返すことができる。単純にこれだけをとってみても驚異的であるし,また昔から子宮筋の生理の解明に先駆的な仕事をしてきた臨床家や研究者によって子宮平滑筋は,その形態的・機能的変化の大きさ,複雑さから"headache"muscleとも呼ばれてきた1)。現在多くの研究者により少しずつ事実が積み重ねられ,器官としての子宮の理解に光が当てられてきているとはいえ,子宮筋はまだ‘headache muscle’の域を抜け出てはいないと思われる。その原因のひとつは,小動物の実験結果が多数報告され,生理。薬理学的な種差などの検討が加えられているにもかかわらず,ヒト子宮筋の基礎医学的立場からの研究結果に乏しく,共通の討論の場が少なかったことにあるといえよう。したがって我々は,ヒト分娩現象の理解のためのモデルとして実験動物を使用しているつもりであっても,結果は実験動物特有のものとして終わることが多かったように思う。このような背景の中で分娩に関連した子宮収縮の生理を述べていくのは困難であるが,ここではできるだけ実験動物とヒト,基礎的事実と臨床的事実を結びつけるような方向で論じてみたいと思う。
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