産婦人科医療--明日への展開 ホルモンレセプター
Case Study--臨床との関連をめぐって
乳癌
松本 圭史
1
,
辻 求
1
Keishi Matsumoto
1
,
Motomu Tsuji
1
1大阪大学医学部病理病態教室
pp.431-434
発行日 1983年6月10日
Published Date 1983/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206825
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乳癌は,子宮内膜癌と同様にホルモン標的組織腫瘍の1つである。ホルモン標的組織腫瘍としては,性ホルモン標的組織から発生する乳癌,子宮内膜癌,前立腺癌,グルココルチコイド標的組織から発生するリンパ性白血病,ペブチドホルモン標的組織から発生する副腎皮質腫瘍,甲状腺癌等が知られている。しかし,患者数も多く代表的な存在が乳癌である。本論文では,この代表的な乳癌のホルモン受容体とホルモン依存性について述べるが,その他のホルモン標的組織癌のホルモン依存性の特徴も類似の点が多いと考えられる。なかでも女性ホルモン標的組織から発生する乳癌と子宮内膜癌は,類似の点が非常に多い。
本誌ですでに述べられているように,ホルモンの作用は受容体を介して発現されることは明らかである。乳腺の増殖と最も密接に相関するホルモンは,噛歯類の乳腺では長沢博士が詳細に述べられたプロラクチンであるが,ヒト乳腺では女性ホルモンである。このヒト乳腺から発生するヒト乳癌の増殖も女性ホルモンの影響を最も強くうける。したがって,ヒト乳癌のホルモン依存性とホルモン療法の研究には,女性ホルモンの作用発現のために必要な女性ホルモン受容体(estrogen receptor,ER)の検索が最も必要である。ヒト乳癌の発生・増殖とプロラクチンの相関は不明の点が多く,またヒト乳癌のプロラクチン受容体も少数の癌に少量認められるにすぎない。したがって,ヒト乳癌についておもに論じる本論文ではプロラクチンについてはふれないことにする。
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