臨床メモ
亜鉛の欠乏によって発生する胎児異常
貝原 学
1
1東大分院産婦人科
pp.889
発行日 1982年12月10日
Published Date 1982/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206730
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動物実験によると,食餌中の亜鉛が不足すると胎仔に種々の異常がもたらされることが知られており,その不足が妊娠初期におこると胎仔の吸収や奇形の発生率が増加し,妊娠後期では胎仔の発育が障害されると報告されている1,2)。
妊婦においても亜鉛の不足によって胎児にいろいろな異常が惹起されるという報告がある。Meadowsら3)は妊婦の白血球中に含まれる亜鉛の量を測定したが,亜鉛の含有量は胎児の発育が盛んになる妊娠26週頃から減少しはじめるという所見を得ており,それは胎児組織に亜鉛が蓄積するためであろうと推定している。さらに彼等は,SFD児を分娩した妊婦と正常児を分娩した妊婦について妊娠後期に白血球中の亜鉛含有量を測定し比較したが,前者が後者より有意に低いことを認めており,SFDの発生と亜鉛欠乏とは密接な関係にあることを明らかにしている。
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