臨床メモ
血漿増量剤による妊娠中毒症の治療
貝原 学
1
1東大分院・産婦人科
pp.173
発行日 1981年3月10日
Published Date 1981/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206399
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妊娠中毒症の発生要因については種々の説があげられているが,現在なお不明である。正常妊娠では妊娠経過と共に循環血液量が増加するが,重症な妊娠中毒症ではこのような血液量の増加が障害され,いわば乏血状態となっていることは誰しも認める一致した徴候であり,Cloer—en1)やGoodlin2)は重症妊娠中毒症のこのような状態を"潜在性(慢性)ショック"の状態と述べている。
最近,妊娠中毒症に対する治療法として循環血液量を増加させる方法が試みられ,論議をよんでいる。Sehgal and Hitt3)は,プラズマネートまたは低分子デキストラン溶液などの血漿増量剤を重症妊娠中毒症患者に点滴静注し,ブドウ糖液を投与した群をコントロールとして,症状に及ぼす影響を比較検討した。血漿増量剤が投与された群では,コントロール群に比較して,平均血圧(収縮期血圧+拡張期血圧/3)およびヘマトクリット値は有意に低下し,尿量は有意に増加することが明らかにされた。しかし,尿蛋白排泄量とクレアチニン・クリアランスには有意差を認めることはできなかった。
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