研究へのいざない・6
胎仔毒性試験法
小林 文彦
1
Fumihiko Kobayashi
1
1塩野義研究所
pp.825-827
発行日 1977年9月10日
Published Date 1977/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205683
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妊娠中の母親に投与された薬物の影響が胎盤を介して胎児に及び,種々の好ましくない結果をきたすことがある。このような現象はかなり古くから臨床的及び実験的に知られてきたことであるが,とくにサリドマイドによる奇形が社会的問題となって以来注目を集め,胎仔毒性のうちでも催奇形性に関する研究業績が急増してきた。このように実験奇形学の基礎の上にたって受精後の発生諸段階に及ぼす薬物の影響を検討する,いわゆる催奇形試験が世界各国で実施され,日本でも昭和38年以来"医薬品の胎児に及ぼす影響に関する動物試験"が新薬開発に義務づけられてきた。しかし,この催奇形試験のみでは精子,卵子の発育から交配,受精をへて分娩,授乳までの全段階,さらに次世代や次々世代にわたる薬物の影響に関する情報が得られないため,これら全てを包含したいわゆる生殖試験の必要性が認識されるようになり,米国(1959,1963,1966),英国(1973),スウェーデン(1974)についで日本でも1975年3月に"医薬品の生殖に及ぼす影響に関する動物試験法について"が公示され,欧米よりむしろ厳しい試験法が義務づけられるようになった。このように胎仔毒性試験の重要性は増してきているが,この試験を始めるにあたり知っておかねばならない最少限の事を中心にその実験方法の概要を述べてみたい。
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