小特集 産科感染症について
妊産婦の尿路感染
高橋 文子
1
,
小栗 知子
1
Fumiko Takahashi
1
,
Tomoko Oguri
1
1東京女子医科大学産科婦人科学教室
pp.613-616
発行日 1975年8月10日
Published Date 1975/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205216
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
妊娠,分娩,産褥における尿路感染は,尿路の解剖学的関係,妊娠の影響などにより発症し易いことは,以前より注目されており,日常に経験される疾患であるが,これら尿路感染は腎感染を招き,ついで腎機能障害を惹起し,ひいては一命をも,おびやかす場合も生ずる。したがつて,たとえ軽症であつても軽視すべきでなく,早期発見し,適当な治療を行う必要がある。
産科領域において発熱または,尿症状を認めた場合,まず原因の1つとして,急性腎盂炎を考えるのが常識とされている。またKassらが尿の定量培養法によつて尿路感染症の診断法を考案し,この方法が一般に普及して用いられている。すなわち尿中1ml中細菌数105以上のものを細菌尿とよび,尿路感染症の指標とする。近年,これら細菌尿が全く健康で,何らの症状も認めない女性,特に妊婦に多く認められること,また,これを無処置のまま放置すると,顕症性の腎盂腎炎の発症,妊娠中毒症,早産、死産,未熟児などの発生頻度が高いことが発表されて以来,多くの研究が行われているが,現在,なお,多くの不明な点を残しており,今後,これらの解明が望まれる。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.