特集 産婦人科プリンシプル
婦人科編
発癌の基礎と臨床
滝 一郎
1
Ichiro Taki
1
1九州大学医学部産婦人科学教室
pp.845-848
発行日 1973年10月10日
Published Date 1973/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204893
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I.総論的に
1.癌の原因
癌細胞がいかにして発生するか,すなわち発癌の機序あるいは機転を考察するには,まず癌の原因となる因子について総括して見る必要がある。癌の原因としてはかなり多くのものが知られている。煙突掃除夫の陰嚢に発生する皮膚癌が煙突の"すす"によるものであるとの推定に始まり,コールタール,タバコタール塗布による実験的皮膚癌の発生,発癌性炭化水素の抽出,合成に至る,癌の原因の追求の歴史は周知のことであるが,現在では,炭化水素以外に数多くの化学物質が,ヒトの癌あるいは動物の癌を発生させることが知られている。
まず職業癌の原因として知られている芳香族アミン,諸種の染料色素,アスベスト,ベンゼン,ニッケル,クロム鉄鉱,ヒ素などがあげられるが,この他諸種のアゾ色素,4—dimethylaminostilbene,5—nitroquinolene−1—oxide (5NQO),nitrogen mu—stard, nitromine, dimethylnitrosamine, cycasin,thioureaなどがこれに属する。化学物質以外に,ホルモン,放射線,ウィルスが知られており,発癌の機序とさらに密接に結びつくものとして遺伝的要因をあげることができる。この他にも未知の要因が存在するであろうことは想像に難くない。
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