特集 産婦人科の治療その限界と展望
日常臨床上よくぶつかる頑症疾患の治療の限界
新生児
母斑
肥田野 信
1
Akira Hidano
1
1東京警察病院皮膚科
pp.1118-1120
発行日 1972年12月10日
Published Date 1972/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204735
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皮層の限局性奇形である母斑は良性のものであり,一部の機能障害を除けば,その害は外観上のものに止まる。したがつて治療として悪性腫瘍に対するような外科的侵襲を加えてはならず,できるだけ瘢痕を残さない方法を選ばねばならない。しかも母斑はいつたん生じたものが一生不変のまま持続することはむしろまれといつてもよく,あるものは拡大進行,または隆起してくるし,あるものは自然に消退し,なんらの手を加えることなしに痕跡的に消失さえするものである。したがつて治療方針を決定する際には当面する母斑の自然経過を一生についておおよそ予想してかかることが不可欠といえよう。
母斑治療の限界はこのことから容易に想像されるように,始めから治療の限界に達している場合もある。言葉をかえていえば,その人がその母斑によつてうるであろう精神的ないし肉体的負担の持続期間と強さ(これは個人個人により実に大きな差があるが,客観的な尺度もまた存在する)と治療によつて生ずるであろうマイナス面,就中瘢痕とをバランスにかけて,よい方を選ぶわけである。
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