研究
重症筋無力症合併患者の分娩前後の管理の実際について
加藤 順三
1
,
坂元 正一
2
,
井形 昭弘
3
Junzo Kato
1
1帝京大学産婦人科
2東京大学医学部産婦人科
3鹿児島大学医学部内科学
pp.890-896
発行日 1972年10月10日
Published Date 1972/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204691
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序
重症筋無力症の発症の類度は,20〜30歳で最多であり,性比は女:男=2:1で女子に多いこと1)(Osser—man),本症の管理の進歩に伴つて,結婚,妊娠,出産する機会がますます多くなつてきている。本症患者の妊娠前および妊娠時の管理は多くは神経専門医にゆだねられる場合が多いが,分娩とそれに続く産褥期における管理は,産科医の手により直接的に委ねられているし,専門医にすぐ直接連絡がとれないような施設では,応急的治療の意味においても産科医が本症合併患者の取扱いの実際を知つておく必要がある。抗コリン・エステラーゼ剤(以後抗ChE剤)を投与するということは知つているが,実際に患者に直面するとき,どの症状の出現の時,どの位の量の抗ChE剤を,どれ位の時間間隔に投与したらよいのか,母親のみでなく,新生児には,どういうように観察,対処したらよいのかといつた実際について,まごつくことが多い。
われわれは,東大神経内科と共同して本症合併患者の妊娠・分娩・産褥経過について経験し,本症合併時の管理の具体的事項の必要を痛感したので,取扱いの実際を記載して,今後の症例の資料としたい。
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