臨床メモ
妊娠と虫垂炎
竹内 久弥
1
1順天堂大学産婦人科
pp.329
発行日 1971年4月10日
Published Date 1971/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204391
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妊娠中に虫垂炎が発生する頻度はさほど高いものではなく,多くの文献によつても非妊婦人と同程度,すなわち1,000分娩に1例位といわれ,むしろ数少ない合併症といえよう。その診断についての注意も,妊娠子宮の増大による虫垂の位置移動や白血球数の決め手にならないことなど良く知られた事実であり,ここで改めて取り上げる必要はないとも思われるが,最近オハイオ州立大学のThomfordら(Surg.Gynec.&Obst.129:489,1969)が20年間における29例についての報告を行なつているので紹介してみたい。
虫垂炎として手術された29例中,22例(76%)が正診であり,誤診7例のうち6例は手術所見から原因が明らかにできず,他の1例は急性卵管炎であつた。また,正診22例のうちわけは妊娠初期8例,中期10例,末期4例であつた。妊娠合併虫垂炎が妊娠6ヵ月までに多いことは定説であり,誤診例の多いことは,手術時期を誤つたために起こる結果の重大性を考えればこれは許されるものと考えられている。
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