薬の臨床
Valpin注射液の子宮卵管造影法に対する応用
笠井 寛司
1
,
森 崇英
2
Kanji Kasai
1
,
Takahide Mori
2
1日本バプテスト病院産婦人科
2京都大学医学部産婦人科
pp.165-167
発行日 1970年2月10日
Published Date 1970/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204169
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はじめに
女性不妊因子中に占める卵管異常の位置は,諸家の統計的観察によつても明らかなごとく,主たる原因の一つであることは言をまたない。卵管異常は,臨床的にはまず通過障害によつて代表され,この点に主眼が投ぜられるのも当然である。子宮卵管造影法,あるいは通気,通水法によつて発見される卵管の通過障害は二面的な要素に大別されうると考える。言うまでもなく,子宮,卵管に存在する器質的変化に基づくものと,一定環境下におかれた患者が表わす機能的または心因性通過障害である。これまた言うまでもなく,一般に患者は医学的諸検査法の実施に当たつて,程度の差こそあれ,恐怖心を抱くのが常である。ここに自律神経系の多大の関与を認容せざるを得ず,特に副交感神経の興奮の受容器である子宮卵管系は,子宮卵管造影術などに際しては直接影響を受け,それに端を発した機能性心因性通過障害像を呈することは十分推測しうるところである。われわれはたまたま2例の心因性通過障害と考えられる患者に相遇した。この2例に副交感神経抑制剤を投与することにより,全く異なる子宮卵管造影像を得たので報告する。
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