特集 卵管--その生理と臨床
卵管の腫瘍
滝 一郎
1
Ichiro Taki
1
1九州大学医学部産婦人科学教室
pp.407-413
発行日 1969年5月10日
Published Date 1969/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204038
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はじめに
卵管の病変として臨床的に最も多く観察されまた興味があるのは,卵管の通過障害をきたし,不妊症と関連のある卵管病変および卵管妊娠であろう。前者の内には,機能的疾患あるいは先天性,後天性の発育障害および炎症や腫瘍が含まれる。卵管の腫瘍だけを取りあげると卵管癌を始め種々な腫瘍の発生が記載されているものの,卵管の腫瘍はきわめてまれであるから,日常一般の診察においてはあまり念頭におかれていない。したがつてほかの卵管疾患あるいは卵巣疾患の疑いで開腹した際,意外な卵管腫瘍を発見診断することの方が多い。では卵管の腫瘍を念頭において診察を行なつて果たして適確な診断を下しうるかどうかというとこれもはなはだ困難である。部位的に見て卵巣の腫瘤,旁卵巣嚢腫との鑑別が困難な場合があり,また卵管の炎症性の腫大との鑑別も容易ではない。
以上のような理由から卵管の腫瘍に限定せず卵管の腫大あるいは腫瘤ということで考えを進めてみたい。ついでに卵管の付近に生じ,これと混同しやすい病変についても考慮を払う。
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