特集 免疫に関する問題点
ABO式血液型不適合妊娠の血清学的検査法
金岡 毅
1
,
岡田 悦子
1
Tsuyoshi Kanaoka
1
1国立福山病院産婦人科
pp.289-295
発行日 1969年4月10日
Published Date 1969/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204020
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はじめに
Rh式血液型不適合妊娠に基づく新生児重症黄疸については,その定義,病因,診断方法,症候論などがきわめて明瞭に説明されている。 しかしながら,わが国においてRh不適合よりもはるかに重要な意義を有すると考えられるABO式不適合妊娠による重症黄疸については,これらを明確にすることが今日なお困難である(表1)。まず定義についても多くの意見があり,新生児に高ビリルビン血症があり,かつ母児にABO式不適合があればこれを直ちにABO式不適合による重症黄疸と考える意見もある。この場合,その発生頻度はきわめて高くなるのは当然で,総分娩数の2.2%がABO式不適合により交換輸血が必要であつたという報告がある1)。 しかし最近単に母児の血液型不適合のみでなく,ABO式不適合による溶血性疾患であるという血清学的事実を母児の両方に求めた上で,ABO不適合による新生児重症黄疸と定義すべきであると考えられはじめた。このように考えた発生頻度は著しく低率であって,安達2)は分娩3,000例に5例以下,九大3)でも0.061%という報告が行なわれている。
さらに問題となるのは,ABO式不適合による重症黄疸であると診断する根拠が今日なお未発達であつて,Rh式不適合の場合,その抗体の証明が直ちに疾患の診断となるのに反して,ABO式の抗体は自然抗体が存在するため,母の既往妊娠,既往輸血あるいは現在の児によつて感作された結果の免疫抗体との区別がむずかしく,また児の方も直接クームステストが陰性のことが多く,溶血疾患の診断が困難である4)。
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