特集 婦人科造影の臨床
リンパ造影の臨床応用—子宮頸癌の問題を中心に
新 太喜治
1
Arata Takiji
1
1岡山大学医学部産婦人科学教室
pp.1041-1048
発行日 1968年12月10日
Published Date 1968/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203970
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はじめに
癌患者の治療に際して,その予後を左右する最大の因子は癌病巣進展の程度である。子宮頸癌の進展を5段階に分ける臨床進行期国際分類の治療成績をみても,この事実が客観的に示されている(表1)。従つて適切な治療を行なうためには,治療開始に先だつて癌進展の状態を可能なかぎり正確に知ることが必要である。そのためには普通の視触診のみによる方法では不十分であり,客観性にも乏しいと言わざるをえない。癌の進展状況についての正確な診断を下すためには,進んだ新しい検査法をとり入れることが望ましい。リンパ造影法の実用化により,予後と関係の深いリンパ節癌転移の診断がある程度可能になり,更に骨盤壁リンパ節の所在部位を明らかにすることによつて,治療面への応用が開けてきたことは大きな進歩である。われわれは昭和37年以降,子宮頸癌患者にリンパ造影法を応用して癌転移の実態を明らかにし,本法の有用性について発表してきた。今回はリンパ造影法の臨床応用に際して,基礎となるリンパ節癌転移の実態と,頸癌手術療法および放射療法における実施成績を中心に,われわれの経験を述べてみたい。リンパ節の解剖学的事項やリンパ造影法の手技については前述されているので省略する。
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