連載 MY THERAPY in series・17
臍帯早期切断例における残留臍帯血の利用
木村 好秀
1
1東京都立荒川産院
pp.966-967
発行日 1963年12月10日
Published Date 1963/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202943
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近年,臨床血液学の進歩により,新生児Rh式あるいは,ABO式による血液型不適合が証明された場合,直ちにこれに対して,積極的に交換輸血が比較的安全に行ないうるようになつた。ところが一方,産科臨床上,しばしば遭遇して,必要を迫られながら案外無視されている簡単な輸血法がある。それは,臍帯の早期切断例における残留臍帯血の再帰輸血法ともいうべき方法であり,これにより新生児の急性貧血は予防され,その後の予後も良くすることが出来ると思われる。
一般に,分娩時の臍帯切断の時期は,臍帯博動の停止を待つて行なわれるが,時にこれを待たずに早期に切断しなければならないことがある。例えば,臍帯巻絡が強くこれを解除することが困難な場合,過短臍帯の場合,臍帯断裂のある場合,さらに,帝切時とくに前置胎盤や胎盤早期剥離の場合などである。これらの理由により,臍帯が早期に切断されると,児は全身蒼白,口唇四肢のチアノーゼ,体温下降,頻脈,呼吸促迫などの症状を呈し,啼泣力も弱く,虚脱ないしショック状態となる。かかる児は,その後も貧血症状を呈し,哺育や発育に種々の障害をきたすことがある。
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