研究
最近1年間の当科における仰臥位低血圧症候群の観察
大川 知之
1
,
高橋 とし子
2
,
服部 秀子
2
,
佐藤 延子
2
,
川村 なか子
2
1福島医大産婦人科学教室
2福島医大付属病院産科
pp.31-35
発行日 1965年7月1日
Published Date 1965/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203003
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I.はじめに
仰臥位低血圧症候群(Supine hypotensive Syndrome—以下ShSと略す)とは古谷1)の報告から引用すると「おもに妊娠後期の妊婦が仰臥位をとるときに,血圧下降,悪心,嘔吐,噯気,気分不振,冷汗,顔面蒼自,呼吸困難,ときに虚脱のような自覚的,他覚的症状を呈する」1種の症候群であると,また小林ほか2)によれば「おもに,妊娠後期の妊婦ないし産婦において,仰臥位時に発現する種々な程度の血圧下降と,それに随伴する自覚的,他覚的症状が側臥位等の体位変換ないし,子宮内容空虚化によって完全に消失する」1つの症候群であるとも定義づけられよう.一方本症候群は手術時以外は予後は比較的良好とされているが,本症の発現は,川原ほか3)の言うごとく,仰臥位というもっとも普通の体位で起こり,そして患者の苦悶は重大で,反面側臥位などの体位の変換によって容易に症状が消失するところにわれわれ妊婦の指導にたずさわるものとして本症に関する十分な認識が要求されるゆえんがある.また従来の帝切時麻酔死の多くは今日では本症候群と大きな関係があると言われてきており,その事故を未然に防ぐ意味においても十分なる検索と対策との必要性が痛感される.
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