所感 DISCUSSION
「アンケート・分娩前後の取扱いについて」(16巻8・9号所載)を評す
足高 善雄
1
1大阪大学産婦人科
pp.897-898
発行日 1962年12月10日
Published Date 1962/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202713
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この度"分娩前後の取扱いについで"の編集部からの依頼によつてわが国の代表的著名病院の産科学界の各権威から,貴重な御意見を寄せられたので,その総評を述べよとの再度の督促があり,私なりの感想といつた軽い意味で以下述べさせて頂くこととする。
日本の産科学が,蘭,独,英,仏とは別に創まり,次第に欧米の産科学の進歩が導入されたので一般に今日では欧米の水準以上にその発展をみたものといつてよいが,分娩取扱いの根底には依然として自然正常分娩Eu—tociaの概念を実現せんとするために概念的に「産の妙諦は忍の一字にあり」として先ず分娩の介助は助産婦に任せ,一歩異常分娩Dystociaの徴候が認められはじめてから産科医を呼ぶ傾向がありこれまでの長い慣習は打破しがたいものがある。特に極めて最近の問題として産院や病院の産科の運営,経営面の困難さ,ことに設備と助産婦,看護婦の手不足のため,ほとんど正しい産科学の理想は実現が困難であると断言してよい現況にあるので,著明病院,産院であるほどそのアンケートの数語の中に各種の処置や取扱いの時間的の面において驚くべき焦慮と苦心が払われているのが滲み出ているように思われる。
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