産科 随想
帝王切開術あれこれ—第14回日本産科婦人科学会総会 シンポジウム 帝王切開術 を聴いて
岩田 正道
1
1佼成病院
pp.648-649
発行日 1962年8月10日
Published Date 1962/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202664
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手術,殊に術前,後療法,麻酔及び輸血の進歩,普及によつて,以前は帝王切開術の適応症であっても,産婦の状態その他によつてその実施が忌避され,或いは危険視されていた各種の異常分娩に対しても大した危惧なく本術を行いうるようになつた今日,本術の実施数が往時に比べて著しく増加していることは元より医学の進歩に伴う当然の事態と称して憚りない。然し「過ぎたるは及ばざるが如し」という諺言の通り,昨今はその濫用の弊漸く顕著なるものがあつて,本術の本態,殊にその母児に及ぼす影響或いは本術に基く後障害等を想うと苟しくも産婦人科学を専攻した者にとつて到底黙視し得ない曲事であろう。先年某地方において指導的立場にある入懇の某医が「近頃私の地方では帝王切開術が急にふえて来て,骨盤位や高年初産婦は大抵切られている有様で,医師会内並びに支払基金の方でも問題となつているが,これというのも中央のおえら方が雑誌や集談会で発表されたことを曲解しているのではなかろうか?」と洩らしていが,確かにその通りであろうと思われてならない。
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