同人放談
日本の医育関係制度は是でいいのか
岩井 正二
1
1信州大学医学部
pp.964-965
発行日 1961年11月10日
Published Date 1961/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202529
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戦後わが国の社会制度が色々改変せられた。われわれの身近かなものでも医療制度,医育制度,助産婦看護婦制度等が著しく変つた。既に十数年を経てもはや戦後ではないといわれる今日これが本当の改良であつたかどうか,じつくり考えてみるべき時ではないだろうか。当時主としてアメリカの制度を採用したのが,これが果して日本の国情にあつていたのであろうか。鵜のまねをした鳥が水におぼれるようなことはなかつたろうか。
先ずわれわれに最も関係の深い助産婦制度からながめてみよう。当時低い助産婦の社会的位置をあげるということで助産婦側の喝采を博したものであるが--勿論その気持の中にはこれによつて助産婦数が少くなり,対照的に自分達の経済的社会的位置がたかまるという考えはあつたろうが--事実はどうであろうか。なるほど一時は街の助産婦さんたちも賑わつたかも知れないが,やがてその実力を知つた患者は病院へ病院へとおしかけた。今日街でやつているのは2,3の実力ある人たちに限られるようになつてきた。これはしかし或る意味ではいいことかも知れない。しかしおしかけられた病院の方はどうか。大きな病院では助産婦の過重労働ということで局面を糊塗しているが,小さな病院ではもはや助産婦はいない。医師がやるという名目で多くは無資格者がタッチしている。
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