同人放談
官公立大学と私立大学
水野 潤二
1
1関西医科大学
pp.654-655
発行日 1961年7月10日
Published Date 1961/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202470
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私は国立大学で学び,公立大学に長らくいて,最近私立医大に来たものである。国立大学には学生時代から医局,大学院を通じて10年,そして公立大学には先生としてやはり10年余りいたことになる。その揚句私立医大に来たので,官公立大学と私立大学の違いというものについての印象は目下のところ最も鮮明といえよう。本欄では思うことを存分にブチマケてよいということを真に受けて,この印象を放談しようと思うのであるが,やはり限られた貴重な紙面であるから,興味は薄れるだろうが,建設的な面を談じるのが良識というものと考える。
此の度私立大学に移るに際しては,私立医大の臨床科は営利面の比重が重くて研究面での気勢が揚らないとか,学生の粒が揃わないとか,俸給が安いとか種々の点が自他から気遣われたことは事実である。そして来て見て成る程そうした点のあることは残念ながら否定できない。しかし反面において私立大学ならではと思う様なよい点のあることも確かである。まず官公立の大学の様に国とか自治体などからの制約を受けることなく,全く大学の中だけですべてが運営されるから,自然学内の空気は和かで,そこはかとなくヒューマニズムの気配も漂い,それに50歳も半を過ぎた先生達には兎角うつとうしい存在であるらしい停年制などという制度は目下のところはなく,一応伸々としておれることは大変結構と申さねばなるまい。
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