随筆欄
絨毛上皮腫研究の推進に就て
長谷川 敏雄
pp.780-781
発行日 1955年8月10日
Published Date 1955/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201231
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今度文部省科学研究費の補助に依る総合研究の課題の一つとして「絨毛上皮腫に関する研究」が採択され,一方日本産科婦人科学会の中にも全理事を委員とした「絨毛上皮腫委員会」が設置されて,共に全国的な研究が強力に推進されることになつた。之は明後年4月東京で日産婦学会主催の下に国際産婦人科学会の一環としてアジア産婦人科学会が開催されることになつており,その主題として採り上げられた「産婦人科に於ける人種的特徴」に該当する疾患の一つとして絨毛上皮腫が指摘され,広く全国的な調査研究が必要となつて来たこととも関連して,学界のため大いに喜ぶべきことゝ云わねばならない。
周知のように本症は一般に白人諸国,殊に欧米では比較的少く,東洋殊に日本,フイリツピン,マレイ,印度,支那あたりでは相当多い疾患とされており,現に数年前来日した相当年配のアメリカの1産婦人科專門医なども,今迄に1例も診たことが無いと云つていた位で,或時適々その剖検例があつたので知らせてやつたところ直ぐに飛んで来て,最後迄熱心に見学し,大変有益で面白かつたと云つて喜んでいたほどであり,其他東北大学の瀬木教授の調査でも,本症に因る死亡数がアメリカでは我国の1/3に過ぎないと云う結果になつている。
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