診療室
膝胸位法による骨盤位の整復に就て
七瀨 雅尚
1
,
宮川 治夫
1
1神奈川県立横浜産院
pp.581-582
発行日 1955年5月10日
Published Date 1955/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201194
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緒言
頭位分娩に比して骨盤位分娩に於ける胎児の予後不良を慮う時,骨盤位の整復に関心をいだくのは当然である。事実,其の整復方法に.関しては種々なる方法が唱道されている。即ち,田岡氏は側臥位法(第一胎向ならば右側臥位,第二胎向ならば左側臥位をとつて就寝させる方法)によつて62%,整復を示すと云い,外川氏はヒマシ油内服及洗腸法(早朝空腹時にヒマシ油25gを内服せしめ,第2日には家庭にあつてイチヂク浣腸を行わしめる方法)によつて初産婦では87%,経産婦では100%を整復せしめ得たと云つて居り,河辺氏は膝胸位法に適宜外廻転を併用して初産婦では70%,経産婦では96%を整復し得たと発表している。然し骨盤位の整復法の実施については賛否両論がある。即ち之を否定する側では種々なる危険を誘発するとなし,又骨盤位の大部分が自然廻転によつて整復され,永久骨盤位となるものは極く少数であり,骨盤位牽出術が適正に実施されるならば骨盤位分娩も決して危険視する必要がないとするものである。然し骨盤位分娩に於ける胎児の予後は明かに不良である。試みに昭和28年度の当院に於ける死産率をみるに第1表に示す如くであつて,骨盤位分娩に於ける死産率は頭位分娩のそれに比し実に7倍強である。(此統計は妊娠28週未満のものは除外す)
又,東京浜田病院の昭和14年より26年に至る期間に於ける記録によつても骨盤位の胎児の予後は頭位分娩のそれに比して明かに不良である。
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